あなたの会社では「ヒト」をどういうものだと捉えていますか?
「手だけを集めることはできない。人がついてくる」(エルトン・メイヨー)
という言葉がありますが、目の前の事業をまわすことばかり考えていると、とりあえずいまこの状態をなんとかしなくては、と作業をする人手を集めることに腐心します。そんなつもりはなくても、従業員を、ふと人間ではなく「機能」として見てしまっていないでしょうか?
でも、その手をたずさえて仕事をしにくる従業員には感情があり、仕事をする上での思いがあり、人生のストーリーがあります。その人にとってはあなたのチームで働く時間も大切な人生の一部です。働く最初のきっかけが生活費を得るためだったとしても、どうせ働くなら楽しく働きたい、いい仕事をしたい、だれかに喜んでもらいたい、世の中に貢献したいと思っているはずです。
もちろん、「いやそんなことはない。働くことはそもそも苦痛に満ちたものなんだ。苦痛に対する補償として金を払っているんだ。金をもらってるんだったらそのぶん働けよ」という意見もあることは認めます。別に否定するつもりはないのですが、それだと、払ったお金の分か、それ以下しか成果が出ないのではないでしょうか?それでは経営的視点に欠けています。投資をするなら期待以上のリターンを引き出したいものです。
優れたリーダーは、社員やチームメンバーから想定をはるかに超える成果を引き出しています。ときにはリーダー自身も、そしてメンバーも思ってもみなかった成果になることもあります。
社員はそもそもいい仕事をしたいと思っている
その前提になっているのが、「社員はそもそもいい仕事をしたいと思っている。そしていい仕事ができる可能性を秘めている」という認識です。例えて言えば、「植物の種」です。もともと種の中にすべてが備わっています。必要な水分と気温の条件が整えば自ら発芽します。そして適度な日光と必要な養分が含まれた土壌があれば、自ら大輪の花を咲かせるのです。しかし環境によっては、ひょっとすると途中で立ち枯れてしまうかもしれません。
あなたの部下が立ち枯れてしまいそうだとしたら、そもそもの種が不良なのではなく、あなたが作っている環境が間違っているのかもしれません。彼や彼女が元気に育ち、大輪の花を咲かせるには、どんな環境を作ってどう関わっていけばいいのか、真摯に考えることが上司として最も重要な仕事です。種が不良なんだからしかたない、と決めつけてしまって何もしないのなら、あなたの上司としての存在意義はどこにあるのでしょう?
とはいえ、具体的に何をどうしたらいいのでしょうか。個別具体的な答えは自分で知恵を絞って出すしかないのですが、先人が試してきたセオリーはあります。セオリーを参考にしながら何をどうすればいいのかを考え、職場で試してみて振り返って学ぶ。そしてまた試す。この繰り返しがチームの成果につながっていきます。
引き続き、そうしたセオリーや事例をこのコラムで綴っていきたいと思います。