法人営業部門の戦略セクションのチーフマネジャーとして活躍する片山さん。もともと気軽にコミュニケーションが取れる風土でしたが、テレワークなどの環境変化でコミュニケーションが難しくなっていました。また、横連携がスムーズに行えない、上位層と担当者との意思疎通がストレスを生んでいるなど、組織運営上の課題がいくつもありました。 チームマネジメント塾で1on1ミーティングを重ねることで組織にどんな変化が起こったのでしょうか?講師も予想しなかった片山さんはじめチームの取り組みとは?
法人営業部門全体では数百名規模になりますが、その中で、計画・戦略セクションを担当するグループのチーフマネジャーをしています
そうですね。5名のマネジャーと12名のリーダーを含め、総勢50名ほどのメンバーとともに、部門全体を統括しています。

最初のきっかけは、「自分自身が1on1を十分に理解できていないのではないか」という気づきでした。
「1on1とは何か」「実施することで何が得られるのか」といった点が曖昧で、やり方もよく分からず、正直なところ個人面談の延長のようなものだろう、という認識でした。
法人営業部門は、もともと比較的フラットで、仲間意識の強い組織です。ただ、その一方で、部署間の横連携が十分に機能していなかったり、「こちらは把握しているが、別のチームには伝わっていない」といった状況が生じていたりもしました。
私は計画・戦略セクションの立場上、さまざまな部署のチーフマネジャーに対して、「こうした取り組みを進めていきたい」と働きかける役割を担っています。いわば事務局的な立場ですね。
そこで、まず自分自身がこのプログラムを受講し、「良い学びなので、ぜひ一緒に取り組んでみませんか」と声をかけたところ、法人営業部門のメンバーも多く参加してくれました。プログラム期間中も、意識的に情報共有を行い、「私のチームでは、こうした取り組みをしてみましたが、皆さんはいかがでしょうか」といった形で、ディスカッションが活性化するよう心がけていました。
コロナをきっかけにテレワークをするようになったじゃないですか。今はフリーアドレス制にしていて、ワンフロアの中でどこに座ってもいいという形にしているんですけど、やっぱり顔が見えない中で、「あの子、今どんなことを考えているのかな」と感じる場面は、何人かのマネジャーが課題として感じています。
50名のメンバーのうち、実感としては、出社しているのは半分くらいかなと思います。普段どんなことを考えているのか分からない、という感覚は、コロナ以降、多くの人が持っているように感じています。
特に若手社員は、まだ人脈が十分に蓄積されていません。新しい職場に、いわばまっさらな状態で来るわけですよね。先輩や上司とも、いきなり本音で腹を割って話せるところまでの関係性ではありません。そうした中で、先輩や上司はテレワークが中心で、たまに会社に来てもフリーアドレスです。結果として、ポツンと座って、「誰に、何を聞けばいいんだろう」と周囲を気にしている、そんな様子も見受けられました。
そうしているうちに、「会社に行っても、あまり変わらないな」と感じるようになります。本来は家庭とのバランスを取るためのテレワークですが、会社に行っても自宅にいても、結局コミュニケーションの状況が大きく変わらない。そうした理由から、テレワークを選択している若手もいる、というのが実情だと思います。
そういうテーマに向き合う1on1は、結構やってきましたね。あとは、横の連携も大きな課題でした。私のグループは5つのチームで構成されているのですが、専門性の高いプロ集団同士ということもあって、横の連携があまり取れていない状況だったと思います。
そうした職場を、どうやって変えていけばいいのかということを、各マネジャーと1on1をしながら話していました。
プログラム開始から間もない、DAY2のキックオフトレーニング直後だったと思いますが、5名のマネジャーと相談し、「アクノレッジメントを組織に浸透させるイベントを実施しよう」という話になりました。
例年は若手社員が幹事を務める忘年会ですが、年度末の忙しい時期に若手に負担をかけるのではなく、今回は私とマネジャーで企画し、日頃の感謝をしっかり伝える場にしようと考えました。普段あまり会話をする機会のない人同士を同じ席にしたり、ゲームを取り入れたり、マネジャー陣からの手書きメッセージ入りプレゼントを用意したりと、準備段階から結構楽しんでやっていました。
当日は想像以上に盛り上がり、「同じグループなのにじっくり話すのは初めて」とか「上司がイベントを企画する忘年会は新鮮」といった声も多く、いっぱい発見がありました。
この研修をきっかけに、1on1を軸とした職場づくりの取り組みが、少しずつ自然に広がっていって、楽しい途中です。

アクノレッジメントは、私の中で大ヒットしました。
先生が「最近のビジネスパーソンは、アクノレッジメントを知っていないと恥ずかしいですよ」とおっしゃった言葉が、強烈に印象に残っています。
異動でメンバーが新しく入れ替わったりする時は全員参加のミーティングをするのですが、「アクノレッジメントって何か知ってる?」みたいな話で、私がパワポ何枚かでしゃべるんですけど、もといるメンバーの中から、TOEICの点数が高い人とか、海外を経験している人とかに当てて、“Acknowledgement”っていい発音してもらったり。
ワードとしては定着しました。先生に教えていただいたアクノレッジメントリストをもとに、色分けやイラストを加えた資料を作成して、まずは役職者から日常の中で意識してもらうようにしました。アクノレッジメントの中には、あたりまえにやっていたり意識しなくてもできていることと、意識しないとできないことがあります。
たとえば、ミーティングの中でひとりだけしゃべってないメンバーがいて、いつもしゃべってるメンバーは同じ。ここにポツンといる彼の存在、どうだったっけ?という話を役職ミーティングで投げかけてみるんです。
アクノレッジメントのリストの中には、発言を促してしゃべってもらうというものがありますが、意識しなかったら自分の会話に夢中で、「君の意見も聞きたいな」みたいな声がけができないよね、という感じで役職者の皆さんと日常の行動を意識することの大切さを共有しました。
それから、職場はスーパーフレックスなので、べつに15時に帰ろうが自由なんです。朝も早く来ようが、事情があってゆっくりとか、自分の中の時間をうまく使えばいいんです。でも、堂々と15時には帰りにくいという変な文化があります。
でも、「そんな雰囲気いらんやん」ということを私から発信して、「今日は15時で帰ります」「お疲れ様でした」ってみんなで言おうと、アクノレッジメントリストをきっかけにやっていくことにしたんです。「今日どこ行くん?」とか次の会話に転がったりしてやってよかったです。

正直に言うと、参加している最中は「8回は長いな」と感じていました。ただ、後半になると、先生から学ぶというよりも、それぞれの実践を持ち寄ってフィードバックし合う場になっていきました。
そのため、「いろいろな取り組みを試した結果を共有している」という感覚が強かったですね。
職場によって課題は異なりますが、少し雰囲気が良くないと感じていた職場に対しても、何かしら手助けができればという思いで、所属長同士のディスカッションにも積極的に関わっています。
職場全体への展開も並行して進めていました。月に1回、私を含めた役職者18名で役職ミーティングを行っているのですが、DAY1直後から、プログラムで学んだことや実践したことを共有し始めました。
年明けには、年始の抱負として「アクノレッジメントが溢れる職場をつくりたい」という思いを、パワーポイントにまとめて全メンバーに伝えていました。
そうですよね。常にプログラムと同時進行という感覚でした。
私とマネジャーの1on1で起きた気づきや変化を、役職会議の場でリアルタイムに共有していきました。少しずつ、1on1のやり方やアクノレッジメントの実践について役職間で会話する機会が増えて、研修中にアクションが始まっていった感じですかね。
まあまあいろいろあります。
職場内のコミュニケーション、OJTの機会減、モチベーション向上、若手育成、育児との両立など、さまざまなテーマを取り上げて、出来るところからやってみようという感じで進めています。
例えば、資料を最初から完璧に仕上げるのではなく、ラフな段階で意見を交わすことで、より早く議論が進むようにもなっています。一方で、若手に対して「自分が責任者ならどう考えるか」というトレーニングが十分にできていない、という課題も見えてきました。
また、子育て真っ最中で、育休明けてすぐ復帰してくれた女性の方に、どんな目標を持ってもらって、どういう伴走をしようか。毎日とても忙しくて大変な中でもやっぱり成長はしてほしいからどうサポートしたらいいのか、といったテーマですね。
あとは人生観とか。リーダークラスからも「片山さん、ちょっと1on1いいですか?話したいテーマがあるんです。『役職』って何ですか」と。

そうなんですよ。こうした質問が出るということは、本人は自分がやっている今のスタイルとか目指す方向が合ってるのかどうか、多分不安なんだろうと思うんです。
まあそういうものが、1on1という形でしゃべってみたら、「僕、こう思ってるんですけど」と話し始めて、「リーダーって何ですかね」とか、「マネジャーって何ですか?」「チーフマネジャーは何が違うんですか?」というような会話になりました。
自分の言葉でしゃべり出して、モヤモヤはしてたんでしょうけど、オートクライン(自分で話しながら気づくこと)が起こったんだと思いますが、すっきりした顔で「またやりましょう」って言って帰っていきました。
そんな感覚の変化があったと思います。
あともうひとつ、職場を良くしたいという気持ちがみんなに伝わってきたかなぁっていう次の話をしてもいいですか?
「確認しあいTime」という取り組みを始めたのですが、これは結構良かったなと思っています。私のグループは、会社の中でも比較的優秀なメンバーが集まっていると思っています。本当の意味での戦略の中核を担う部署ですし、仕事自体はきちんと回っています。
ただ一方で、成長戦略を描いていこうという流れの中で、役員も含めて、かなり高い目標を追いかけています。そうなると、どうしても宿題や新たなオーダーが次々に降ってきますので、みんな疲れがたまってきているのも事実です。
少し悶々とした表情をしているメンバーを見ることもあって、「今、何に対して、どんな思いを抱えているんだろう」と感じていました。そんなタイミングで、会社全体で実施している「モチベーションクラウド」という、いわば組織の健康診断のようなサーベイがありました。
匿名で150問ほどの設問に対して従業員が回答するものなのですが、その結果を見ると、経営層が考えていることが十分に伝わらないまま仕事をしている、という実態が見えてきました。経営層に対する不信感のようなものが、職場の課題として浮かび上がってきたんです。
そこで私は、5つあるチームそれぞれのミーティングに参加して、「実際のところ、どんな状況なのか」という話を聞いて回りました。そうすると、本当にいろいろな意見が出てきましたし、「確かにそうだな」と、こちらも気づかされることが多くありました。
私の上には部門部長がいて、さらにその上に副本部長がいます。例えば、本部長から何か指示が出ると、その内容が少しずつ膨らんで伝わっていくことがあります。もともとは軽い話だったものが、伝言ゲームのように伝わるうちに、いつの間にか大きな宿題になってしまうんです。
上に良いものを上げたい、きちんと応えたいという思いから、「これも教えてほしい」「ここまでやってほしい」と、指示にいろいろな要素が付け加えられていきます。結果として、過剰な品質になってしまっている。「もしかすると、誰かが無意識のうちに拡声器の役割を果たしてしまっているのではないか」と、そんなふうにも感じました。

担当者は、営業フロントからのオーダーも抱えています。その中で、「どの優先順位を、どう変えればいいのか」という点で悩むことになります。
上司からは「上からのオーダーを最優先で」と言われるものの、「本当にそこまで必要なのか」と、心の中で引っかかりを抱えたまま、突発業務をこなしている、という声も多く聞かれました。
こうした状況では、ミドル層がかなり丁寧に背景や優先順位を説明し、本当に重要なものは何なのかを整理する必要があります。その中で生まれたのが、「確認しあいTime」という発想でした。
スポーツでVARがありますよね。審判が集まって、ああでもない、こうでもないと確認しています。あれを職場でもやろう、という声が、メンバーの側から自然と出てきたんです。
この「確認しあいTime」は実際によく使われています。少し確認したいことがあると、部長以下、私やメンバーが集まって、「確かにそうだね」「これはこういう整理ができそうだね」「こういうスリムな進め方もあるね」「じゃあ、このやり方で進めて、優先順位はこうしよう」といったことを、その場で普通に話せるようになりました。
「確認しあいたい」という気持ちを、そのまま確認できるようになったことで、モヤモヤしたり、腹立たしさを抱えたりしながら、夜遅くまで悶々と仕事をする姿は、かなり減ってきていると感じています。
先生のおかげでいろいろいいことがありました。
上がってると思います。
主体的に動くという点については、本当にそのとおりだと思っています。
私の職場は、本当に「待っていられない」職場なんです。私たちが判断や舵取りを誤ると、あっという間に百億円規模の損失につながってしまう、いわば生き物のような事業を扱っています。そのため、仕事の進め方としては、各レイヤーでしっかりとチェックが入り、最終的に意思決定ができるスタイルが出来上がっています。
ただ、先ほども少し触れましたが、「では、あなた自身はどうしたいのか」「あなたなら、どのプランを推すのか」という問いかけの部分が、これまであまりにも薄かったと感じています。
その結果、アイデアがすべて上司の表情を見ながら、「そうですよね」と同調する形になってしまうと、どうしても広がりが出てきません。調べる内容も、上司が求めていそうな情報に寄ってしまいがちになります。
そこで、私がこの研修で学んだ内容を上司である部門部長にも共有し、「これから意識して聞くようにしよう」と決めました。
「あなたはどう思う?」という問いかけを、部長と私がいろいろな場面で投げかけるようになると、やはり自分で考え始めるようになりますよね。どうせまた聞かれる、と思うと、自分なりに情報を集めたり、一度ストーリーを組み立ててみたりする。そうした動きは、少しずつですが確実に出てきていると感じています。
もちろん、全員が完璧にできているわけではありません。ただ、質問を繰り返すことは意識しています。日常の仕事の中で、1on1に限らず、「私ならこの作戦かな。でも、きみの考えもぜひ聞いてみたい」といった会話を、意識的に交わすようにしています。

小さな意識付けの積み重ねですが、続けていかないといけないですね。
アクノレッジメント浸透イベントも続けていきます。
こんどはリーダーたちで、60人ぐらい集まる大歓送迎会のアクノレッジメントイベントを考えてもらっているところです。
この研修がとても良かったので、学んだ内容は部下のマネジャーにもできるだけ早い段階で必ず共有するようにしました。マネジャーたちも、まるで先生の研修をリアルタイムで受けているかのような形で取り組んでくれました。
その結果、各マネジャーをトップとする5つのチームは、少しずつではありますが、良い意味で順回転が始まっていると受け止めています。
私は部門全体で数百名規模の組織を見ていますので、自分の直下のメンバー、50名だけに目を向けるのではなく、やはり各職場の役職者層とも積極的に関わっていきたいと考えています。チーフマネジャーやマネジャーが集まる会議、あるいは現場に足を運ぶ中で、マネジメントがうまく機能していないと感じるチームが、ところどころ見受けられることもあります。
そうした職場に対して、1on1を浸透させていくことも一つの手段だと思いますし、それに加えて、先生に教えていただいた職場の土台づくりや、ベースとなるコミュニケーションのあり方を伝えていくこと、そして個別にいろいろな人と対話を重ねていくことにも取り組んでいきたいと思っています。
正直なところ、1on1に対してネガティブなイメージを持っておられる方は、割合としてはそれなりに多いのではないかと思います。私自身が1on1を行ってきたマネジャーの中にも、過去に「1on1」という名前のもとで、質問攻めに近い形で追い込まれてしまい、ミーティングルームを出るときには、気持ちがぎゅっと縮こまってしまった、という苦い経験をされた方がいらっしゃいました。
実際に「1on1をやりましょう」とお伝えすると、「少し抵抗があります」とおっしゃる方もいます。ただ、先生から学んだことを踏まえて1on1を行うと、終わる頃には明るく、すっきりした表情になって、2人で部屋を出るときには自然と会話をしながら、にこやかに終わっていることが多いんです。
雑談が盛り上がりながら、こうしたさわやかで、楽しい1on1ができるようになりますよ、ということは、ぜひお伝えしたいですね。
これは研修を通じて強く感じたことでもあるのですが、1on1を重ねていくことで、少しずつ関係性の質が変わっていくんだと思っています。関係性の質が上がると、自然とコミュニケーションの量や中身も変わってきますし、その結果として、一人ひとりが前向きに動きやすくなる。そうした流れは、まさに先生が教えてくださった成功の循環モデルそのものだな、と実感しています。
あとは、これは私個人の考えですが、1on1はあくまで手法の一つだと思っています。職場を良くしたいと考えたときに、いきなり成果や行動を変えようとするのではなく、まずは土台や基礎となる部分、つまり関係性の質をどう作っていくかに目を向けられたことが、とても大きな学びでしたし、「これはすぐに取り組みたい」と感じたポイントでもありました。
